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木蓮の様子に明慶と芙蓉以外はうんうんと頷いて同意していた。 「木蓮?急にどうしたの?僕はそこまで急がなくてもいいと思うけど。  それにまだ踊りのチェックもあるし・・・。」 芙蓉は木蓮がこんなに焦っている事が不思議でならなかった。 ここは安全な街で、ここにいればそうそう身の危険なんてないはずなのだ。 それに、自分達はもう”花”としての役目も終わっているし何かにつけ呼ばれるという事もなくなる。 「―――芙蓉様、ここはあなたが思うほど安全ではないんです。とにかく  今日中に移動いたしましょう。」 木蓮の言葉は硬い。言っている事はよくわからないが彼女が言うのだからそうした方がいいのだろう。 芙蓉は、うんと頷き、明慶の方を見た。 明慶は口を真一文字に結んで眉間に皺をよせていた。 ――――――今日から・・・今日から一緒に眠ることが出来るっ!! 明慶は木蓮の言葉に頷いた芙蓉を見て、既に夜の事で頭がいっぱいになっていた。 もう公務以外で離れるなんて考えられなかった明慶は、興奮が抑えられなくなっていた。 真一文字に結んだ唇も、嬉しくてブルブル震えてしまう。 顔に力を入れていなければ今にもにやけてしまいそうだった。 「明慶様・・・顔、ひどいです。なんて顔してるんですか?表情が卑猥って  こういうことを言うんですね。」 柳ヶ瀬に言いたい放題言われているが、気にしない。 だって、今日から大好きな芙蓉と一緒に過ごせるのだから。 「ならば、芙蓉様の部屋の蜜廊下の灯りの色を決めなければなりませんね。」 柳ヶ瀬が資料を取り出し、早速仕事に取り掛かる。 口は悪いが仕事に対しては勤勉で素早く対処してくれるので助かる。 「蜜廊下?」 「はい、蜜廊下。明慶様と芙蓉様のお部屋だけが直通されている裏の廊下です  そこを通る事が出来るのは、明慶様と芙蓉様だけ。」 ”蜜廊下” 将軍の寝室と正妻の寝室だけが繋がれた秘密の廊下 そこを通るときは正妻のカラーの電気がともされ渡りを知らせる。 廊下の場所は極秘になっており、知っているものは、将軍の側近と、正妻の世話役だけ。 有事の際にはその廊下から外へ脱出することも出来る。
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