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「そんな廊下があったんですか・・・。」 芙蓉は目を真ん丸にして驚いていた。 知らなくて当然なのだが、城のセキュリティーはここよりももっと厳しく万全の態勢なのだろうと思うと、これから舞の稽古の時は一体どうすればいいのかという不安も生まれてくる。 「芙蓉様のカラーはグリーンです、柳ヶ瀬様、グリーンですからっ!」 木蓮がしきりに緑を押している、別に緑は好きな色なので構わないのだが 何故か木蓮が生き生きとして決めているのがおかしかった。 「あははっ、木蓮、僕より張り切ってる。顔が楽しいって言ってる。」 「何言ってんの!当たり前じゃない!あんたのカラーはあたしが一番わかって  るんだから、任せなさいって!」 まるで噴水の前で二人っきりで話している時の様な感覚になってしまった木蓮は、思わず口を押える。 「も、申し訳ございません!」 既に立場が違うのだ、言葉使いも気を付けなければならない。 「木蓮、知らない人たちの前でなら我慢する。でもこうやってお互いに気を  許せる人の前では前の様に話してくれないかな?僕はそうして欲しい。」 木蓮の手をそっと握り、首を傾けお願いする芙蓉。 この顔をされると、どうしても勝てない 「―――わかりました、芙蓉様が望まれるのであればそうさせて頂きます。」 お互いにニッコリ笑い合って、そこはまるで花がほころんでいるようだった 明慶はその様子を見て思った、俺にもああやってお願いしてくれないかなと 今の首を傾けてのお願いポーズは堪らなかった。 一瞬気を失ってしまうのではないかと思うくらいに可愛かった 自分の懐の中でああやってお願いなんてされてしまったら・・・・ 首輪を外されたオオカミ君にいくらでもなれるだろう!! 「―――変態、顔。ちょっとは理性というものが働かないんですか?  確かに、可愛かったです。えぇ、認めますとも!ですがここではなんとか  そういう表情を抑える様にしてください。」 柳ヶ瀬はどうしてこうも自分の心が読めるのか、明慶には不思議でならなかった。一言たりとも声を発していないというのに。
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