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「明慶様もきっと同じ事思ってるわよ。私に話すときみたいに楽に話して  みたらいいんじゃないの?奥に入ったら二人っきりになる事だって多くなる  んだからさ、もっと、なんでもいいから聞きたい事聞いてみたら?」 芙蓉は、会話をして人との距離を測る子である。木蓮はそのことを身をもって知っているため、こうアドバイスした。 一緒に恋愛の勉強していた時も、モジモジした展開が好きだったように、自分の恋もこうやってモジモジした展開の方が安心するのかもしれない。 だが、明慶にとっては地獄だろう。あれだけ雄臭をまき散らしているのだ。 今晩だって恐らく芙蓉の元へ向かってしまうだろう。 「芙蓉、明慶様の事苦手?」 こうなったら単刀直入に聞いておくしかない、もし、彼が苦手というならば、 明慶には悪いが、慣れるまで抑制剤を打ちまくって耐えてもらうしかない。 「――――ん、ううん、苦手じゃない・・・と思う。明慶様の香りは安心する  から、怖いとか嫌だとか思った事ないよ。」 よかったーーーっ!木蓮は胸をなでおろした。 芙蓉がこんな事をいうのも珍しいのだが、自分も同じように柳ヶ瀬の香りは妙に落ち着いて安心する。 芙蓉もやはり明慶の香りには安らぐようなので、2人が距離を縮めるのも時間の問題だろう。 「大丈夫よ、芙蓉。あとは明慶様に任せてしまえばいいの。私達はなるように  なるだけなの。ねっ?」 なるようになってしまった自分が言うのだから間違いないのだ。 自信満々の木蓮の顔を見た芙蓉は、もう笑うしかなかった。 確かに木蓮の言っている事はあっていると思う。自分の様な何も分からない人間がどれだけ考えても、これと言った答えなど出てこないのだ。 ならば明慶に全てを委ねた方が上手く行くというものだ。 「うん、木蓮ありがとう。もうこうなったら僕もなるようになる作戦に委ねて  みるよ。」 木蓮は芙蓉の笑顔を見て、よしよしと頭を撫でてやった。 「芙蓉様、木蓮、準備が出来ました。さぁ、奥へ参りましょう。」 丁度、何となく答えが出た辺りで柳ヶ瀬が声を掛けてきた。 いよいよ、奥へと向かうのだ。聞いている話では、明慶様は側室をとらないと言ってあるはずなのに、既に何名かが勝手に奥入りしているのだという。 これから正妻として奥に入る芙蓉は邪魔でしかない、自分がちゃんと守らなければならないと、木蓮はおへそに力を込めた。
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