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「あ、あのっ、す、すいません。よろしくお願いします。芙蓉と申します。
好きな食べ物はお野菜で、特に葉っぱが好きです。舞が得意で他は・・・
えと、あの・・・。」
突然の事に驚いた芙蓉は、取り合えず自己紹介から始めた。
明慶は葉物が好きだという情報を手に入れることが出来き、内心ガッツポーズをしていた。
しかし一向に誰も顔を上げてくれないので、困ってしまった芙蓉は明慶に視線で伝える。
明慶は、彼の困った顔がまた良くて、ついつい見つめ合ってしまう。
助けて欲しいと訴えてきているのは分かってはいるのだ。だが可愛い顔を見ていたいと思うのは世の中の雄の本能で抗うことなど出来ないのだ。
ウルウルと潤んでくる瞳を見て、漸く諦める事にした。
「顔を上げてくれ。」
明慶の言葉に皆が漸く顔を上げ立ち上がってくれた。
こうやって言わないと皆顔を上げてくれないのかと思うと、億劫な気分になってしまう。
芙蓉は涙目で漸く顔を上げてくれた木蓮の元に近づきその小さな肩に小さな顔を寄せて隠れてしまった。
余りにも可愛いこの元”花”同士の絡みは、ここにいる全員に写メという文字を頭に思い起こさせ、パシャパシャとシャッターを切る音が鳴り響いた。
長年一緒にいた真絹でさえ、しっかりとおさえており、なおかつその長年の距離を利用し、目線頂きのベストショットまで撮って竜聖と仲良く鑑賞していた
柳ヶ瀬は竜聖に交渉し、あとで添付ファイルを送ってもらうという裏技まで使っていた。
明慶はここにいる全員の携帯を1台1台ぶっ壊したい衝動に駆られたが、我慢した。自分は何時だって生の芙蓉が見れるのだからお得感は半端ない。
彼らはどうしたって画面上の花にしか会えないのだからそこは寛大な心で許してやるのが、長というものだ!
そう自分を納得させているのだが、画面を見ている警備マンたちの顔がニヨニヨしているのを見ていると、イライラなのかソワソワなのかわからない感情が生まれてきて落ち着かない。
このままここに居たら、芙蓉の可愛さが減る!と思った明慶は彼の細い手首をやんわりと掴み、扉の中へと連れていく事にした。
その瞬間後ろから、”あぁ・・・”と、残念そうな声が聞こえてきたが、振りむくことはしなかった。
「明慶様・・・大人げない。」
柳ヶ瀬の一言は合っている。間違いないのだ。
「芙蓉が減ってしまうだろっ!!」
「僕、お腹減っていません。」
全くポイントのズレた答えを発する芙蓉だが、そこがまた可愛いと、結局明慶はニヤニヤとしてしまう。
しかし、これから先心配なことだらけになってしまうなと、不安というか心配というか・・・。
そこに居てくれるだけで場が朗らかになる芙蓉の持つ雰囲気は明慶にとってとてもありがたい事ではあった。
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