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誰かが口を開き言葉を紡ぐまでとてつもない時間が過ぎたような気がした。
その間、2人はただじっと見つめ合い、互いに思う事を視線だけで訴えているようだった。
「芙蓉・・・慌てなくていいの。必ずくるわ、だって私達にはそれが逃れられ
ない運命なんだもの。その時を今はまだ待つ時間があるとおっしゃっている
だけなのよ。」
木蓮の言葉に、芙蓉は小さくわかった、と答えるだけだった。
明慶は芙蓉のこの姿を見る事が一番辛かった。
彼に発情期が訪れていない事は極秘の資料でわかっていた、それでも彼をどうしても妻にしたかったのは、明慶の恋心。
高校生という多感な時期に迎えた初恋を叶えるために、何度も何度も話し合った。柳ヶ瀬、竜聖と共に何度も話し合って決めた事。
もし、運命の番が現れて、芙蓉がそうでなければ諦める。
現れなかったら、芙蓉を妻にする。もし、彼の発情期が来なくて子が成せなかったときは、側室を迎え、明慶の冷凍精子を解凍し、その人に産んでもらい次代の将軍を繋ぐ。
運命の番が現れない限り、正妻はどんな事があっても芙蓉だと決めていた。
その運命が、芙蓉だと分かった時のこの3人の喜びは誰にも決してわかりはしない。
明慶は今まで誰にも手を付けたことがなかった。すべてを芙蓉にささげるために、決して誰にも身体のどの部分も触らせて来なかった。
昨日交わした口付けは、芙蓉と同様初めてのものだった。
当然将軍家には代々、床の練習をするための女性がいる。
何度もレクチャーを受けるよう話はあったのだが、明慶はそれを受け入れる気はなかった。
初めては全て芙蓉にささげたい、どんなに拙くても、どんなに震えていても、
緊張の全てをも受け取って欲しいと思っていたから。
「俺は、待つよ。君の身体の準備が出来るまで。その覚悟はとうにできてる。
だから君は、俺を愛してくれ。」
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