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こんな所でこんな事を・・・芙蓉の頭の中は羞恥でいっぱいだ。 でも、支えてくれる手が温かくて優しくて、そして艶めかしい。 漸く離れた唇を繋ぐ銀糸は、明慶のぶ厚い舌に舐めとられ、触れるだけのキスが落とされる。 「芙蓉、すまない。このまま俺の部屋まで連れて行ってもいいだろうか?」 じっとひとみを見つめられ、甘い声で言われてしまえば、もう残された選択肢など一つしかない。 芙蓉はゆっくりと目を閉じ、軽くうなずいた。 急に両足を掬い取られ、視界が傾く。驚いた芙蓉はとっさに明慶の首にしがみ付いた。 「―――そうだ、落ちないようにこうやってしがみついててくれ。」 彼が話す言葉が、自分の細い腕を通って振動してくる。 そのかすかな震えでさえも、身体中を甘く刺激してくるのだから、堪ったものじゃない。 軽々と横抱きにされてしまった事への抵抗など全くできるはずもなく、ただ明慶の歩くリズムに身体が揺れるだけ。 「お、重くないですか?」 勉強会で読んだ本の様に、お姫様みたいな扱いをされて、顔がどんどん赤くなっていく。芙蓉はその恥ずかしさを紛らわすために明慶に声をかけたが 「軽すぎて心配になるよ。」 クスリと笑いながらそう語り掛けてきた明慶の顔に見蕩れるほかなかった。 端正な顔立ち、といった男の顔は今まで腐るほど見てきた気がする。 でも明慶は、極上という言葉が一番しっくりくるのではないだろうか。 廊下と廊下を繋ぐドアを開ければそこは、将軍と許された者しか入る事の出来ない、寝室が見えた。 芙蓉はキングサイズベットにふわりと降ろされ、その上に潰さないようにと優しくのしかかって来た明慶。
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