7人が本棚に入れています
本棚に追加
シエラ。
彼女の名前らしい。
少なくとも、この街に来るまではそう呼ばれていたらしい。
僕はタンスから僕の服を出し、彼女に渡した。
とりあえず、シャワーを浴びて、それに着替えろよ。
ちゃんと洗ってあるから大丈夫だ。
僕は彼女にシャワーの使い方を教えて、彼女をシャワールームに押し込んだ。
そして缶詰のスープを開けるとコンロに火をつけた。
「お湯が出ないわ…」
シャワールームから彼女の声がする。
確かにうちのシャワーはお湯の調整が難しい。
蛇口を少し回し過ぎると水になり、回したりないと熱い。
少しだけ左に回してみな。
僕はシャワールームの外から言う。
「熱いわ…」
今度は少し右。
少しだけだぞ。
「少し温いけど、これで良いわ…」
彼女の声がシャワーの音に重なり聞こえてくる。
僕は何故かそんなやり取りがおかしくなり、いつしか微笑んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!