クレイブンの魔法使い

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彼女はクロワッサンを口に咥えたまま、ベッドの上に投げ出される様に置いてあった脱いだワンピースのポケットを探る。 そして「クレイブンの魔女」と書かれた紙を僕に差し出した。 僕はそれを受け取ると、上着を着た。 ちょっと電話してくるよ。 僕は彼女にそう言うと部屋を出た。 一階にある管理人室の前の電話機にコインを入れると叔父さんの新聞社の番号をダイヤルした。 二回コールしたらすぐに電話は繋がった。 出るのが早くて驚いた事をカシム叔父さんに伝えると、 「新聞記者ってのは何でも早くないとな。早寝、早起き、早飯、早糞ってな」 カシム叔父さんは大声で笑っていた。 「ところでどうした。お前が俺に電話してくるなんて珍しいじゃないか」 カシム叔父さんに電話したのは二回目。 パン屋で働くのにどこのパン屋が評判が良いかと訊いた時と今。 僕は彼女の持っていたメモを開いて叔父さんに訊いた。 「クレイブンの魔法使いね…」 叔父さんは電話の向こうで黙っていた。 知ってるの…。 僕はメモを折りたたみポケットに入れる。
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