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パン工場で働く僕は、今日もリドルの旦那に言われた数のパンの入った箱をオートモービルに積み込んでいた。
今日は少し暖かく、一人で積み込んでいると額に汗が滲み出る。
サスカの奴が無断欠勤したので、積み込み作業は僕一人。
明日、サスカがやってきたら、一言文句を言ってやろうと朝からずっと考えている。
最後の箱を積み終えて、額の汗を拭いながらオートモービルの扉を閉めると、そこに女が立っていた。
女と言っても僕より少し上くらいかな。
「良い匂いね…。一つくれないかしら」
彼女はニコニコ微笑みながら言う。
僕は彼女に、パンのお店は角を曲がったところにあるからと言い、積まれた空の箱に座った。
すると彼女は僕の横に無理矢理割り込む様に座る。
「そのパンのお店は知ってるわ。この工場で作ったパンを売ってるんでしょ。だったら、あなたが私にくれても同じ事じゃない」
僕は真っ直ぐに僕を見つめて言う彼女の目の力に身体を引いた。
僕はパンの値段も知らないし、ましてや君に売って良いモノかどうかもわからない。
まだ見習いだからね…。
そう言うと立ち上がった。
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