7人が本棚に入れています
本棚に追加
「それなら問題ないわ」
彼女も立ち上がってスカートのポケットに手を入れた。
何だ…。
お金は持ってるのか…。
彼女はポケットから手を出してゆっくりと開いた。
そこにはお金ではなく、青く光る石があった。
僕は呆れて文句を言おうとした。
すると、
「黙って…。ほら、見て…」
そう言ってその石を僕に近付ける。
僕は躊躇しながらその石を覗き込んだ。
濃紺の石は尖った光を放ち、覗き込む僕の顔を映していた。
そして彼女も同じようにその石を覗き込む。
仏頂面の僕とニコニコと微笑む彼女の顔がその石に並んで写った。
石が放つ光が徐々に強くなっていくような気がして、やがてその光が僕と彼女を包み込む様に飲み込んだ。
しかしそれ以上の事は何も起こらず、僕は彼女を見て溜息を吐いた。
それでも彼女は僕を見てニコニコと微笑んでいる。
僕は彼女に待ってろと言い、売り物にならないパンを工場の中から幾つか持ってくると、彼女に渡した。
最初のコメントを投稿しよう!