クレイブンの魔法使い

4/28
前へ
/28ページ
次へ
「それなら問題ないわ」 彼女も立ち上がってスカートのポケットに手を入れた。 何だ…。 お金は持ってるのか…。 彼女はポケットから手を出してゆっくりと開いた。 そこにはお金ではなく、青く光る石があった。 僕は呆れて文句を言おうとした。 すると、 「黙って…。ほら、見て…」 そう言ってその石を僕に近付ける。 僕は躊躇しながらその石を覗き込んだ。 濃紺の石は尖った光を放ち、覗き込む僕の顔を映していた。 そして彼女も同じようにその石を覗き込む。 仏頂面の僕とニコニコと微笑む彼女の顔がその石に並んで写った。 石が放つ光が徐々に強くなっていくような気がして、やがてその光が僕と彼女を包み込む様に飲み込んだ。 しかしそれ以上の事は何も起こらず、僕は彼女を見て溜息を吐いた。 それでも彼女は僕を見てニコニコと微笑んでいる。 僕は彼女に待ってろと言い、売り物にならないパンを工場の中から幾つか持ってくると、彼女に渡した。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加