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夕方、日が暮れる前にパン工場は終わる。
その代わりパン工場の朝は早い。
パン職人たちはまだみんなが寝ている時間から工場へやって来て、パンを焼き始める。
僕たちはそのパンが焼き終えた頃にやって来て、焼き立てのパンを箱に詰めてオートモービルに積み込む。
今日も余ったパンを袋に入れて持ち帰り、夕食と明日の朝に分けて食べる。
パン工場で働く理由の一つに、パンを買わなくて済むという理由があった。
安い給料で働いているが、食費は助かっている。
バックスキンのジャンパーを着てマフラーを巻くと、工場の裏手から外に出た。
そして壁に立てかけた油の切れかかった自転車を押して通りに出た。
するとそこに、昼間パンをあげた彼女が立っていた。
彼女は僕を見つけると小走りにやって来た。
「待ってたのよ」
彼女はニコニコと微笑みながらそう言った。
待ってたって言われてもな…。
僕は自転車に跨って走り去ろうとした。
すると彼女は僕の自転車の後ろに座った。僕は自転車を下りて、彼女を睨む。
何やってんだよ。
降りろよ…。
僕は彼女の袖を掴んで自転車の後ろから降ろした。
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