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「お腹空いたのよ…」
彼女は僕に微笑みながらそう言う。
彼女はずっと微笑んでいた。
その微笑みが僕を馬鹿にしている様に見えた。
お腹空いたなら家に帰れよ。
僕は彼女を突き放す様に声を荒げる。
「おいおい、スワッジ。女の子虐めてるんじゃないぞ」
通りすがる工場の仲間が僕を冷やかしながら帰って行く。
僕は恥ずかしくなり、彼女の手を引いて細い路地に入った。
一日中日の当たらないその路地はひんやりとして寒かった。
家、何処なんだ…。
僕は彼女に訊いた。彼女はゆっくりと首を横に振った。
家は何処だって聞いてるんだよ。
僕は溜息を吐きながらもう一度彼女に訊く。
「わからないの…」
わからないって…。
僕は彼女の顔を覗き込む様に見た。
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