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「、、、その人いわくね、雪祭りの日に、月が出たのは、第1回雪祭りの三日月以来、一度もないらしいんだ。最初は僕も嘘だと思ったのだけどね、記載された文献を見てみたら、本当に書いてあったんだ。おそらく事実だろうね。」
ん? 僕はこの時、違和感を隠せなかった。
4年前初めて行った雪祭り。その記憶を鮮明にまだ覚えている。当日の空模様に至るまで、なんとなくだが覚えていた。たまらなくなって、僕は外山に聞いた。
「外山はちなみにさ、4年前の雪祭りには行った?」
「もちろん行ったぞ。」
「その時の月の様子ってちなみに覚えてたりする?」
「ん? まあ結構覚えているが、、、
その日も確か、月は出ていなかったんじゃなかったか?」
「、、、そうだったかな?」
自分の記憶違いだろうか?
まあまあ昔の記憶だから、完全にあてになるわけじゃない。でも、、、。
そうこうしているうちに、武田と高崎センパイが帰ってきた。
「あれ?、和温君と外山くん。まだ帰ってなかったの?」
そう言われて、僕は窓の外を見た。
空はもう綺麗な茜色に染まっていた。
「もう結構な時間だよ。ほらほら、早く帰った帰った!」
そういって高崎センパイは僕らにへばった武田を押しつけ、教室のドアをバタンと閉じてしまった。
「高崎センパイ〜!」
武田がドアの前にくっついて離れないのを、外山が懸命に引き剥がそうとしている。
僕は用事があるとことわり、2人と別れた。
4年前の雪祭りの記憶、多分間違ってはいないと思うのだ。だって、その日の空模様は、妙に綺麗だったから、、、。
一面に降る真っ白な雪。屋台から漏れる温かなひかり。行き交う人々から伝わる温もり。
そんな地上世界と位相を異とする、どこまでも澄み渡った夜空と、、、浮かぶ幻惑的な三日月。その三日月の美しさは、幼かった僕の心に、不自然なくらい強く残っている。
でも、外山は、雪祭りの日、月は出ていなかったと言った。
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