君(きみ)

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あれは僕、山川和温が中学一年生の時だった。 あたりはもう真っ暗で、街頭がポツポツと 灯っているだけだった。 4年に一度の雪祭りからの帰り道、あのお祭りで感じられる温かさも、ここまでくるうちになくなってしまった。 雪を含む空気がキンキンに体を冷やしてくる。 僕は家への道を急いでいた。 雪は静かにしんしんと降り注いでくる。 ふと僕は足を止めた。右手にある雪を被った木々の隙間から火が灯っているのが見えた。 僕は考える暇もなく、吸い寄せられるように、そこへ向かった。 そこには一人の少女が、火の前に手をかざして座っていた。雪のように白くて真っ白な長い髪が強く印象に残った。 知らない人に話しかけるのは得意じゃなかったが、このままだと凍えてしまいそうだった。 「ねえ、隣に座ってもいい?」 僕が声をかけると、彼女は驚いたようだった。しばらく黙ってこちらをじっと見つめていた。 「いいよ。」 これは僕の気のせいかもしれないが、この時の彼女はどこか嬉しそうだった。
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