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「よかったら食べて。」
彼女はそう言って火で炙った鮎の串を
僕に差し出した。
鮎の香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。
「もらっていいの!?」
彼女はコクリと頷く。
「いいよ。」
僕は焼きたての鮎にかぶりつく。
「あっつ!」
はっふはっふしながら鮎を飲み込む。
彼女はクスリと笑っていた。
「ゆっくり食べて、別に誰もとったりしないから。」
彼女の注意を聞いていなかったわけではなかったが、早く食べたいと言う思いに駆られて、再び鮎にかぶりつく。
またさっきと同じ始末。
隣で彼女がクスクスしている。
ふぅ、ふぅ。
しっかりと熱を冷ましながら、彼女は鮎を少しずつ食べていく。
そんな彼女を見て、なんとなく、似合わないなと思った。
飼い主に捨てられた可愛らしい犬が無理矢理自力で生きていく術を見つけたみたいな、そんな感じがした。
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