君(きみ)

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「なんでこんなところに?」 鮎を少しずつかじりながら、彼女は尋ねる。 やっぱり似合わない。 おかしくて、ふふふと笑ってしまった。 何で笑われているのか察したのか、彼女はふくれっ面だった。 「雪祭りの帰りに、ここを通りかかったんだよ。向こうの平原で光ってるものが見えたから、あったまっていこうと思って、」 「あったまっていこうって、、、知らない人に頼るより、まず早く家につこうって思わない?」 「家まではまだ遠かったし、凍え死にそうだったし、それに、、、」 「それに?」 ちょっと恥ずかしかったが、感じたことをそのまま伝える。 「なんか火の光みたいなものが見えた時、 運命みたいなものを感じたんだよ。 そこに行かなきゃいけないみたいな、、、 なんだろう、使命感?」 「なにそれ、変なの。」 彼女はくすくす笑った。 なんか恥ずかしくなってきて、頬が紅潮していくのがわかる。僕も彼女につられてくすくす笑った。僕たちの笑い声は、火が取り囲むこの温かな空間によくなじんでいた。 彼女の名前は、真白佐奈というのだそうだ。 彼女に僕の名前である和温という名前をいうと、 よしよしと僕の頭をなでてきた。たぶん犬を連想したんだと思う。 無性にくすぐったかった。
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