1人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんでこんなところに?」
鮎を少しずつかじりながら、彼女は尋ねる。
やっぱり似合わない。
おかしくて、ふふふと笑ってしまった。
何で笑われているのか察したのか、彼女はふくれっ面だった。
「雪祭りの帰りに、ここを通りかかったんだよ。向こうの平原で光ってるものが見えたから、あったまっていこうと思って、」
「あったまっていこうって、、、知らない人に頼るより、まず早く家につこうって思わない?」
「家まではまだ遠かったし、凍え死にそうだったし、それに、、、」
「それに?」
ちょっと恥ずかしかったが、感じたことをそのまま伝える。
「なんか火の光みたいなものが見えた時、
運命みたいなものを感じたんだよ。
そこに行かなきゃいけないみたいな、、、
なんだろう、使命感?」
「なにそれ、変なの。」
彼女はくすくす笑った。
なんか恥ずかしくなってきて、頬が紅潮していくのがわかる。僕も彼女につられてくすくす笑った。僕たちの笑い声は、火が取り囲むこの温かな空間によくなじんでいた。
彼女の名前は、真白佐奈というのだそうだ。
彼女に僕の名前である和温という名前をいうと、
よしよしと僕の頭をなでてきた。たぶん犬を連想したんだと思う。
無性にくすぐったかった。
最初のコメントを投稿しよう!