君(きみ)

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僕たちは、それから、寒さを忘れて、時がたつことさえ忘れて、いろんなことを話して、笑いあった。 佐奈と過ごす時間は、とても心地よかった。このまま、帰りたくなかった。 会話がストップする。気まずいと言うわけじゃなくて、もう帰らなきゃってことを、お互いに悟ったのだと思う。 「ねえ、和温。」 「ん、なに?」 少し間が空く。 「雪祭りの起源って何か知ってる?」 僕はぽかんとした。急に雪祭りの話が出てきて不意を突かれた。 「やっぱりなんでもない。」 彼女は微笑む。 気のせいかもしれないがなんとなく、 彼女は何かを我慢しているように見えた。 「、、、時間は大丈夫?」 佐奈が優しく微笑む。腕時計に目をやると、もう10時を回っていた。帰らなきゃって思う反面、何かがそれを邪魔していた。 彼女を見る。彼女の笑顔はどこか寂しそうだった。そして頼りなかった。繋ぎ止めておかないと消えてしまうような、そんな感じがした。 「ねえ、佐奈。」 「なに?」 「またきてもいい?」 一瞬、佐奈の体がピクンと跳ねた。 佐奈は、何か思いつめているようだった。「わたしも和温に会いたい。 だけど、、、」 だけど、なんだろう? 僕はただ、続く言葉を待つことしかできなかった。 「和温と話すのすごく楽しい。もっといろんなこと話したい。でもね、君はきっと後から、わたしに会ったことを後悔する。」 佐奈の声は微かに震えていた。 彼女は何か溢れるものを精一杯堪えているようだった。僕はそんな彼女のそばに行き、手をぎゅっと握った。 彼女は驚いて、こちらを見る。 彼女の目にはいっぱいの涙がたまっていた。 僕はニッコリと佐奈に微笑みかけた。 「おばあちゃんが前に僕に言ってたんだ。 人はみんな温っかいんだって。もし誰かが困っていたり、落ち込んでいたりしたら、 こうやって手をぎゅっと握ってあったかくしてあげればいいんだって。」 うん、うん、と彼女は頷く。 真っ白な地面に涙がポロポロとがこぼれているのが見えた。 「僕には佐奈が何で悩んでいるのかわからない。本当は話してほしいけど、無理することはない。ただ、僕は何があっても、絶対に君と会ったことを後悔なんてしない。絶対に。」
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