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言い終わったあと、密かにくさいことを言ってしまったと反省した。
でも、そのくさい言葉は、彼女にしっかりと届いたようだった。
「ありがとう、和温。本当に、本当に、、、。」
彼女はヒックヒックしながら泣いている。
佐奈の背中をさすりながら、僕は佐奈のこれまでの生活を想像した。
誰も頼れず、今日のような寒い日であっても、ずっと一人で生きていくしかない。
佐奈は親に捨てられたのだと言った。
それはどんなに寂しくて、悲しくて、辛いことであっただろう。
そんな彼女を、一人にしてはいけないと強く思った。
佐奈は幾らか落ち着きを取り戻したようだった。
彼女は僕にニッコリと微笑んだ。
目にはまだ涙の跡がじんわりと残っていた。
「和温、私ね、今気づいたことがあるんだ、なんだと思う?」
なんだろう。見当もつかなかった。
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