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あれから一か月。いわゆるホワイトデーだ。
まさか先輩からお返しを貰えるなんて思ってない。実は先輩に話しかけたのはあれが初めてで、相手は私の名前も知らない。つまりは私の超一方的な片思いだったわけだ。
もらえたら嬉しいな、お友達になれたら嬉しいな。そんな妄想をしてた。
そう、妄想をしてたのだ。
「お、みつけた! 君、俺にチョコをくれた子だろう? お返しを持ってきたんだ、受け取ってくれ!」
これは夢ですか。
その日は一日も先輩と会うことなく放課後になった。ほんのちょっとだけお返しを期待してた私は、そんなうまくいかないか……と肩を落として友人と帰路についていた。
すると、校門に見覚えのある姿が見えた。あちらも私たちに気づいたようで、大きく手を振ってこちらに走ってきた。それはまさかのまさか、先輩だった。そして上記に戻る、というわけだ。
「えっ、あっ、わ、私ですか?」
「ああ! もちろん君にだ! チョコをくれた人を間違えるほど、俺は馬鹿じゃないからな」
太陽の様にニッと笑う先輩。照れているのか夕日に照らされているのか、先輩の顔は赤かった。その頬を掻く指に絆創膏が貼られているのに目が付いた。
「先輩、その指は?」
指摘すると、先輩は恥ずかしそうに言った。
「ん? ああ、これか。実は、俺はあんまり料理が得意ではなくてだな……。でも、味は保証するぞ! 是非食べてくれ」
そう言って私に向かって可愛らしく飾られた紙袋を差し出した。私が震える手でそれを受け取ると、先輩はぱっと手を離して、「そ、それじゃあ、その、俺は帰るから……じゃあなっ!」といって走って帰ってしまった。
友人曰く「あの時二人ともまっかっかだったね」とのこと。
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