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雪煙がもうもうと上がった。俺はとにかく彼女がいたあたりに走っていった。倒れた雪像は巨大でしっかりと固められていた。
とにかく掘るしかない。俺は何も思いつかなかった。俺が何気なく蹴ったせいで倒れてしまった。彼女が下敷きになってしまった。その思いが頭の中を駆け巡る。どうか無事であってくれ。
俺は両手を使って雪を掘っていった。手が冷たかった。かぶっていた帽子を片手に巻いて、片手はマフラーを巻いた、それでもすぐに手は冷たくなった。
「どうしたんですか。だれかいるんですか」
従業員らしき人と観光客らしき人が集まってきていた。
「この下に人がいるんです。彼女が埋まってるんです」俺は必死に訴えた。
何人か一緒に雪を掘ってくれた。誰かがどこかに電話してくれた。警察?消防署?スコップを持ってきてくれた人もいた。
「スコップは危ないんじゃないか。埋まってる人が怪我する可能性がある」冷静な人がいてスコップはとりあえず無しになった。
もう手の感覚はすでになかった。誰かがスキー用の手袋を持ってきてくれた。それを借りてみんなで必死に雪を掘った。
時間の感覚を失っていた。10分だったか一時間だったかどれだけ時が経ったのかわからなかったが、彼女の髪の毛が見えた。さらに必死になって無我夢中で彼女の全身が出せるようになるまで掘った。
ようやく彼女を雪の中から助け出した。
「和歌!和歌!」俺は声をかけたが、返事はなかった。救急隊員が来て彼女をストレッチャーに乗せた。
「連れの方?一緒に乗って」隊員が俺に言った。
俺は和歌と一緒に救急車に乗った。隊員が何かしら措置をしている。無線で救急病院と話をしていた。
「心肺は動いてる」。意識はない。外傷は二箇所。足首と頭部から出血。輸血準備お願いします」
死なないででくれ。俺は彼女を見つめた。頭から血が出ていた。肌が透き通るように青白かった。太陽のような笑顔で笑っていた彼女とは思えなかった。
俺はとにかく誰だかわからない神様に、彼女を死なせないでくれと祈った
彼女が死んだら俺のせいだ。俺がふざけたばっかりに。俺がこんなところに連れてきたばっかりに。もし中世の騎士がいるのなら、彼女こそ助けられるべきお姫様だろう。
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