病院

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病院のロビーで一夜を明かした。本当なら今頃俺たちはホテルの大きなダブルベッドで、イチャイチャしていたはずだ。彼女の黒く長い髪を見つめながら、彼女しかわからないいい匂いを嗅ぎながら。 命に別状はない。生きている。当たり前だ。死んでたまるか。でも…意識が戻るかどうかはわからないと、医者は言った。脳にダメージがあるかもと言った。 彼女が目覚めなかったら、何か障害が残ったら…。ああ、考えるのをやめよう。ロクでもない。信じるんだ。彼女は… 恋に落ちて あなたを見るたび 胸が熱くなります どうしてそんなに美しいのか どうしてそんなに麗しいのか 南国の花に包まれたみたいに あなたに会うたび心踊ります ねえ、恋の歌歌ってくれませんか ねえ、最後のダンス踊ってくれませんか いつか見た映画のように 今すぐ会いに行きます 今すぐ会いに行きます 起きて待っててください あなたに会う前私は いったいなにをしてたのでしょう 思い出せません、覚えていません とても明日を待ち切れません あなたの話を全て覚えていたい どんなくだらない内容でも どんな長いエピソードでも ソプラノの響きで満たされるように 太陽のように笑うあなた 風雪になんか負けませんよ 大地にすっかり愛されてますから エルフの館で見かけたように もうすぐ夜明けです もうすぐ夜明けです やっとあなたに会えます あなたを知る前の私は いったいつまらない男でした 駆けずり回って、探し回って やっとあなたに会えたのです あなたに恋をしたのです、私は いったいそれは当たり前のこと 会いたいです、さあ目を開けて 私の声が聞こえるでしょう
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