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朝になった。医師がきて「昼過ぎに麻酔が切れるはずだから、その時また来てください」と言った。
「失礼ですがご関係は?」
「友人です」
「家族の方に連絡してください。できれば来てもらってください」
和歌の家族は知らない。唯一知ってるのは、同級生のアイドルまーちゃんだけだ。俺はいったんホテルに帰った。彼女の荷物を見て、息苦しさを感じた。
まーちゃんに連絡した。スケジュールは空いてなかったが、マネージャーに無理を言ってなんとか来てもらうことになった。
ホテルの大きな部屋が気に入らなかった。一人でいると頭の中にたくさんの良くないことが流れ込んできて、爆発しそうだった。
強いお酒を飲みたかった。でも彼女に会った時、素面じゃないとなんだか、裏切った様な気がする。飲みたいのを我慢した。
シャワーを浴び着替えてまた、病院に戻った。
彼女の病室の前で椅子に座っていた。病室の扉を穴が空くほど、木目の模様を覚えるほど見ていた。そうすることで彼女の意識が戻ると、自分に思い込ませていた。
「先生?」顔を上げるとまーちゃんが立つていた。とりあえず急いで来たのだろう、顔色が悪く、髪もボサボサだった。
「まーちゃん!ありがとう、来てくれて...」
「どんなんです?和歌は?」
「もう麻酔が切れて、目を覚ましても、おかしくないと思うんだけど…」
「目を覚まさないの?どうして?」
「頭をかなり怪我してるようなんだ。だから少しその意識が戻るまで時間がかかるかもしれないと、医師が話していた」
まーちゃんは目を大きく見開き、両手で口を押さえた。何か聞き取れない言葉をつぶやいた。
「家族に、連絡してくれた?」
まーちゃんは頷いた。
「すぐには来れないみたい。今夜遅くなるって」
「そうか…」
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