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まーちゃんが和歌に説明した。和歌自身は女優で、まーちゃんは有名アイドル。あの番組のアイドルオーディションに申し込んで、事務所の社長に気に入られて正統派アイドルになったこと、和歌は小劇場の女優をやりながら、有名になった俺の作詞モデルをしていること。その取材旅行でこのトマムに来たこと。そして事故にあったこと。
「今すぐ信じろなんて言わないけど、先生のおかげで私たちは、平凡とは遠い生活を送ってる。『夜のシジミはコンドロイチン』はもう何年も前に終わったのよ」
和歌が何か話そうとして、口を開いたが、思い直して口を閉じた。
「君たちが僕のファンだって思ってた…」
俺はなんだか彼女たちが俺を見下しているような気がした。バカにされているような気がした。
「私たちはファンなんです。あの番組も先生の歌も大好きだったんです。和歌はあんまりちゃんと思い出せてないだけなんです」
まーちゃんは俺に向かって必死で言った。
「毎週見てるよ。あんなくだらない歌よく作れるねって二人でいつも話ししてるもん」
昨日まであんなに綺麗で、俺のことを思ってくれてた和歌とはとても思えない。
「ちょっと、先生は廊下に出てもらってていいですか。私がちゃんと説明するので。なんならホテルに帰っていただいても構いません。ちょっと落ち着くまで…」
何が落ち着くんだ。これは一体どういうことだ。
「ホテルに帰るよ。何かあったら連絡してくれ」
ホテルに帰った。携帯の電源を切ってベッドに横になった。心の中にいろんな言葉が流れ込んできた。押し返そうとしても無理だった。
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