トマム

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俺たちはトマムのリゾートホテルに着いた。最近は俺も普通のカップルのように振る舞うことができるようにいなってきた。 彼女は可愛らしい毛糸の帽子と何かしらのコートでパンツではなくスカートだった。 「スカートなんだ。寒くない?」俺はアホみたいな質問をした。 「大丈夫。寒いのは得意なの」 そう答えて彼女は俺の腕にしがみついた。それが演技なのかそれとも本心なのか、俺には判断がつかなかった。 もちろんメイクもしっかりとしているみたいだったがいかんせん、俺には細かいことはわからない。 「すごいね。全部まるごと雪の中にあるのね。素敵。夢見たい」 「いい感じだね。これは人気になるはずだ」 心なしか彼女の顔が赤くなったような気がした。一瞬すごく彼女にキスをしたくなったが、そういうのはルール違反のような気がして、断ってからするべきだと思った。もしかしたらチークかもしれない。彼女一流の演技かもしれないから。 部屋に入りガラス越しに景色を見た。雪化粧をした山なみ、スキー場のリフト、白銀の世界というけれど真白な大地と透明な青空のコントラストがまぶしい。景色を見るだけでここに来てよかったと思う。 こじんまりとしてるがお洒落な部屋で、ソファがあってテレビがあって、ベッドがあった。 内風呂も付いているが、大浴場もあるらしく俺はそっちに入りたい。 「いい感じだね。スキーとかする?」和歌が聞いた。 「したことがない。俺はアウトドア派じゃないから」 「じゃあ、余計挑戦しなきゃ」 「君がやるってことで。俺は後で君の感想を聞くよ」 「ダメ。私もやったことないもん。こういうのって同じ体験を共有することで、愛が深まるのよ」 愛が深まってそれで、どうするんだ。そうか。それを詞にするんだった。
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