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一度部屋に帰った。
「ああ、君にはまいったよ」
「そうでしょう。男子をもてあそぶのは得意なんですよ。先生ももっと女子の転がし方を、勉強なさったらいかがですか」
俺はああいうお洒落な場所は大の苦手だ。どうしても大声でふざけたくなるし、下品に振る舞いたくなるのだ。脳が小学生のまま止まってしまったのだろう。
「いや、その手のものは大嫌いでね。当たって砕けろでずっとやってきたから」
砕けっぱなしなんだけども。
「それは先生、女の子がかわいそうですよ。女の子は言い訳できる理由を探してる時がありますから」
「どういう意味?」
彼女は俺の質問には答えず、窓際まで歩いて行って下を見た。
「先生、お洒落な雰囲気が苦手なのはわかってますけど、下のアイスビレッジに行きません?」
「あのパンフレットにのってたやつ。雪だか氷だかで作ったお店がライトアップされてるやつ」
彼女はまた俺の腕を取り、俺の返事を待たずに外に連れ出した。彼女からかすかないい香りが漂ってくる。さっきいっしょにごはん食べたはずなのに。どういう手品なのだろう。彼女の演出は俺を混乱させる。いや混乱ではない。彼女という人間に単純に落ちていっている。それだけだ。
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