首の無いカラス

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「絶対に、負けて終らないから。  たとえどれだけの敗北を突き付けられようと、徒労だと言われても。絶対に認めはしないから。  嗤いたいのなら嗤うと良い。  目障りならば消しに来れば良い。  絶対に、負けて終らないから。  貴方の隣に、貴方の傍に、貴方と共に。  必ず、そこに立って見せるから。  だから少しで良い、ほんの少しで良いから、待っていてくれないか?」  ならどうして居なくなったのか、僕には何も分からない。  誰よりも挫折を知っていた君は、負けるものかと誰よりも努力をしていた。  誰よりも、誰よりも、誰よりも。  幾度と繰り返す敗北と失望。  悔しさを覆い隠す筈だった怒りは、擦り切れて無くなっただろう。  だから僕は言ったのだ。  いつか報われる、そんな事ある訳がない。  あるのは現実で、理想なんて都合の良いものは存在しない。ましてや、希望なんてありはしない。  何かを望んだ所で、何も変わりはしないのだから。  君は他者の才能を認めていたじゃないか。  嫉妬の裏返しと自嘲していたけれど、僕はその君の在り方を美しいと思った。  だってそれは、自分に期待しているからだろう。  けれど僕はそれらを否定する。  否定しなければならないから。   肯定はしたいが、それは僕への否定だ。  君が嫌う、自分自身への絶望だ。  だから僕は君の在り方を否定し続けた。  いや、今だって否定し続けている。  消えてしまった君を夢に見る。    これは罰だ、後ろを向いて諦めて、無気力に生きる僕にはお似合いか。  本当に、どうして今になって思い出すのだろう。  君が居なくなったのは、遠い日だ。  暗闇に慣れすぎたみたいだ、目映いばかりだったあの日々に目が眩む。  白く染まる視界でさまよい歩く群衆に紛れた。  少しずつ世界を取り戻して、僕は前を向く。  嗚呼。  今日も僕らは首の無いカラスに先導されて、同じ場所をぐるぐると、馬鹿みたいに歩いてた。  君を見失ったその日から、僕は同じ場所を歩いてる。  
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