ホワイト&レッド・デー

3/11
前へ
/11ページ
次へ
 そのチョコレートの入った箱は、赤い包みで包装されていた。彼女は赤色が何よりも好きだ。前に、『この世で一番大好きなものと同じ色だから好きだ』と言っていた。だから、きっと彼女の趣向だろう。  中身のチョコレートはと言えば、少々不格好だった。だけど、その不恰好さが、市販の無機質なチョコレートとは違い、家庭のような温もりを感じさせていた。味も整ってはおらず、食べる部分によってムラがあり、チョコレートが入っているアルミカップのせいだろうか、時たま金属のような味もしたが、それはそれでご愛嬌だと僕は思った。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加