第1部 Only One

2/5
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 私の名前は、勇菊(ゆうき)。物心ついた頃から、いつも勇真と一緒だった。勇真は、私と違い言葉数が少なく、大人しく控えめな少年だった。いつも悲しそうな瞳で、おどおどとした感じで私に寄り添っていた。私はそんな勇真が好きだった。勇真が悲しそうな表情をする度に、頭を軽く撫で、額に柔らかい口づけをして上げた。勇真もきっと私のことを好きだったはずだ!決して、私の思い違いではなかったはずだ。だって、私達は常に寄り添い、助け合いながら生きてきたのだから。  けど、私には常に気になることがある。それは、私達を見つめる回りの人達の視線……。 というか、私達を見つめる時の表情だろうか?まともな表情をしている人は一人もいない。何故だろう。 私と勇真がいつも一緒にいることが、そんなに変なのだろうか?私には理解出来ない。人によっては、まるでこの世の物でない物を見てしまったかのような表情をする。嫌な気分だ。私達は異常者でもなければ変わり者でもない。私達は普通の人間だ!自分に何度も言い聞かせる。 決して負けないように! 強くなるために! 勇真のためにも!  私達には、親がいない。そう、ふと気がついたら二人だけだったのだから……。私達の親は、私達を生んだら何処かに姿を消してしまった。私達はしばらくの間、私達の親の知り合いと名乗る者に育てられたが、やがて、そこを追い出されることになってしまった。私達と一緒に生活を送ることが、どうしても嫌だということだった。 何故? 何度も考えてみたけど、理由は何処にも見当らなかった。それに、その理由を考えるだけで、悲しくなるだけだったから……。     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!