第1部 Only One

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 それから、私達だけの二人だけの放浪生活が始まった。どんな時でも二人で、寄り添い生きてきた。二人でいれば、暗闇も怖くなかったから。  しかし、働くことの出来ない私達は、どうやって生き抜くことが出来たのだろうか?それは、勇真のおかげと言っても過言ではないだろう。そう、勇真のおかげだ!勇真が持っている不思議な力のおかげだ!勇真の不思議な力……。何て言ったらいいのだろうか?私には、うまく説明するだけの能力という物が存在しない。例えばこんな感じだ。 「ふうー。疲れたね勇真……。なんかお腹すいちゃったね。どうしようか?」 と勇真に語りかけた瞬間、私の目の前には、数個のパンとミルクの入った二本の瓶が現われた。 微かな微笑みを浮かべながら、驚きながらも微笑む私を見つめる勇真。そう、勇真は、常人では理解することの出来ない力を持っていた。勇真の不思議な力のおかげで、私達は飢えとは全く無縁だった。私達は空腹感に襲われる度に、勇真の力で食料を手に入れることができた。これが、私達が生き抜くことが出来た理由だ。  この勇真の不思議な力に気が付いたのはいつのころだっただろうか?よく思い出すことが出来ない。確か、二人で空腹感を忘れる為に、草原に寝そべっていた時だ。     
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