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留花はこうして、神社へと向かう階段の前へとやってきたのだった。辺りには風を受けて、石畳の上を行ったり来たりする枯れ葉が移動する音、揺れる枝の擦れる音だけが響いている。寂しい場所だ。そう思いながら彼女は歩を進める。ヒールが地面を蹴る音。それを盛大に響かせながら少し急ぎ足で、留花は階段を登りきる。
階段を登りきると、少し開けた場所に出た。石畳の一本道の先には、少しの階段、その先に賽銭箱と鈴緒、その向こう側には小さな拝殿がある。大きさ的に、人二人並ぶのが精いっぱいといったところか。留花は、石畳の一本道をそれて、|手水舎≪てみずや》へ向かった。
ところが、手水舎の近くまで寄ってみて彼女は気づいた。立派な龍の顔。本来なら新たな水が吐き出されるその口から、水が出てきていないのだ。意図的に止められているのか、故障中なのか。……故障中ともなんとも書かれていないその場所にしばし立ち尽くし、彼女は目線だけを自分の今いる場所の反対場所へ移した。そこには二つの長屋が並んでおり、その右側はおそらく、お守りなどを販売する建物なのだと予想ができた。いくつもの窓と、窓枠に張り付けられるように取り付けられた商品を陳列するための板が、それを物語っている。しかし建物の電気はついておらず、陳列用の板には大量の落ち葉がのっているところを見ると、かなり長い期間、使われていないことは容易に想像できた。留花は、小さく息づき、呟いた。
「……これは……ひどい」
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