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そう言いながらも、彼女は階段を登り、拝殿へとやってきた。
拝殿を上から下までひとしきり眺めた留花は、賽銭箱と拝殿の境界線にある木製の格子窓に目を止めた。格子の枠組みに半ば引っ掛けるようにしてワンカップ大関が1缶乗っかっている。しかしそれにもまた、埃や落ち葉がのっていた。留花はそっと、ワンカップを手に取ると埃や落ち葉を払いのけ、元の場所に戻した。そうして、自分の鞄を漁る。鞄の中から、昨日仕事場でもらったワンカップが2個出てきた。彼女はワンカップの隣の格子の隙間に並べる。
それから賽銭箱に5円玉を投入し、鈴を鳴らす。涼やかとは言い難い、がちゃがちゃした鈴の音が辺りに響き渡った。留花は音が鳴りやむのを待ち、祈った。
長い間留花は、お願いを伝え続けた。それから踵を返して帰ろうとした。拝殿と手水舎を繋ぐ階段を下りたとき、彼女は違和感を感じた。先ほどここを通った時とは、何かが違う。そう思い、注意深く辺りを見回した。そしてぎょっとする。
お守りを売っていたと思われる場所の隣の建物、おおよそ倉庫か何かだと彼女が思っていた場所。先ほどまで暗かったその場所に電気がついていた。しかも入り口は開いており、入り口の前に自立式の看板が置いてあった。そこにはへたくそな字で、
「かふぇ。 なにかしら だします」
と書かれてあった。
「何かしら出しますってどういうこと……?」
そう呟きながら、留花はスマートフォンを取り出し検索サイトで、神社の名前とカフェの二つのワードを検索ボックスに入れて検索をかける。彼女が欲した情報と合致した情報は、叩きだされた数百件の情報の中からたった一つだけ。情報量の少なさに驚きを隠せない彼女ではあったが、さらにその情報を見て絶句した。
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