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昼間のハローワークは、多くの人でごった返していた。灰色の空間に溢れる人、人……。不安な顔、何かを必死で探している顔。ひどく疲れた顔。諦めたような顔。留花は、軽くめまいを起こしそうになった。しかしなんとか入り口を通り、カウンターにいる少し年のいった女性に恐る恐る声をかける。
「あの、すみません。今いる職場からの転職を考えてまして……。登録をしたいんですが……」
すると、女性はこちらに微笑みかけて優しく言う。
「新規登録ですね。こちらの用紙をそちらの記入台でご記入頂けますか。記入できましたら、こちらにまたお持ちください」
用紙を受け取ると、留花は女性に会釈して、用紙を記入する記入台へと向かった。以前来た際には、もっと強面の女性がカウンターにいて、ひどく不愛想に扱われたこともあり、この場所や、職業安定所全体に対してひどく抵抗があった。
約1時間後。個人情報登録を済ませ、個人用のIDが書かれたはがきを持って、彼女はハローワークの自動ドアを出、大きく伸びを一つした。室内は、どこか空気が淀んでいるようで、外の刺すような空気が、今の彼女には嬉しく感じられた。
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