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先ほどまでの沈んだ気持ちを吹き飛ばすかのように駐車場を駆けて愛車に飛び乗り、車が揺れるくらい強くドアを閉める。そしてさっさと鍵を差し込んでエンジンをかけるとサイドブレーキを引いたまま、数度アクセルをあおった。無性にアクセルを踏み込みたい気分だった。
そのまま何度かアクセルをあおり、駐車場を後にしながら留花は考える。このまま帰宅するべきだろうか、それともどこかに寄り道をしようか。
そんなことを考えながら、車は不思議と帰路についている。見慣れた景色を眺めながら、別のことも考える。このまま帰る、それでいいのだろうか。私はもっと考えなければならないことがあるのではないか。
ふと助手席側の窓を見やると、田んぼの広がる平らな土地と山の境界に立つ、灰色の鳥居が目に付いた。そういえば、と思い留花は信号を左折した。車があるため、別のルートからしか入ることはできないが、あの神社に行こうと思った。
この道を通る度、留花は何度も、あの鳥居の向こうにある神社に再び足を運びたいと思っていた。いつかの夏、留花が小学生くらいの頃に一度だけ行ったことがある程度なのだが。なぜ一度行ったきりの神社に心惹かれるのか、彼女自身にもよくわからなかった。しかしいつもこの道を通るとき彼女は一人ではなく、誰かと一緒だった。初詣に行くわけでもなく、特段改めてお願いすることもない。同乗者に、寄り道を提案することは難しかった。しかし今日車に乗っているのは彼女一人で、そして改めてお願いしたい願い事も持っていた。寄り道するのに、これほど都合のいい日はないだろう、そうハンドルを力強く握りながら彼女はそう思った。
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