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年上としての矜持(リカルド)
騎士団内部の風邪大流行も落ち着き、倒れたエリオットも無事に復活した頃。
リカルドは一人大きな溜息をついていた。
「どうしたのですか、リカルド先生?」
風邪から復活したばかりのエリオットの診察をしならが、リカルドは知らず知らずのうちに暗い顔をしていた。それを察したエリオットの方が気遣わしい目だ。
「何か、困った事でも」
「あぁ、いえ。プライベートな事なので」
本当にプライベート、しかも自分の気持ちのあり方の問題なのだ。
だがエリオットは穏やかに笑って、「話を聞く」と言ってくれた。
ここにきて、誰かに悩みを打ち明ける事で気持ちが楽になることを知った。以前は相談できる相手なんていなかったのに。
今では同じ医療府のエリオットには、わりと話ができるようになっていた。
「どうしたんですか?」
「……焦ったり、不安になったりする事って、ありますか?」
「え?」
リカルドの言葉に、エリオットは少し首を傾げる。そして、正直に頷いた。
「ありますよ。むしろそればかりです」
「もう、長いのですよね? それでもですか?」
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