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安息日前日、珍しく落ち着かなくて宿舎を出たボリスはその足で、フェオドールの家にきていた。
家族の件でこれといって話す気はない。余計な心配はかけたくないし、これはボリスの家の事だから。
でも、出迎えたフェオドールは途端に難しい顔をしたのだ。
「何かあったのか?」
「そんな事はないよ?」
「嘘をつくなよ」
難しい顔をするフェオドールはそれでも家に招き入れてくれる。けれど出されるのは酒ではなくてお茶だった。
「お酒がいいな」
「ダメだ」
呆れながら言われ、少しふてくされる。でもこれもポーズだと見抜かれている感じがする。長くいれば誤魔化しは通用しない。フェオドールに変化があればボリスが気付くのと同じように、フェオドールもボリスの様子の違いが分かるんだろう。
「長くいるって、案外誤魔化しきかないのね」
「私を相手に誤魔化すな。何があった」
「……母親が俺の除隊嘆願出した。明日、話し合ってくる」
「な!」
落ち着けていた腰を上げたフェオドールは驚いたり青くなったりしている。けれど次には強情な顔をしてみせた。
「私も明日一緒に行く」
「いいよ、拗れるし」
「良くない! 私にも関係のある話しじゃないか」
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