家族だって譲れない(ボリス)

4/14
前へ
/119ページ
次へ
 安息日前日、珍しく落ち着かなくて宿舎を出たボリスはその足で、フェオドールの家にきていた。  家族の件でこれといって話す気はない。余計な心配はかけたくないし、これはボリスの家の事だから。  でも、出迎えたフェオドールは途端に難しい顔をしたのだ。 「何かあったのか?」 「そんな事はないよ?」 「嘘をつくなよ」  難しい顔をするフェオドールはそれでも家に招き入れてくれる。けれど出されるのは酒ではなくてお茶だった。 「お酒がいいな」 「ダメだ」  呆れながら言われ、少しふてくされる。でもこれもポーズだと見抜かれている感じがする。長くいれば誤魔化しは通用しない。フェオドールに変化があればボリスが気付くのと同じように、フェオドールもボリスの様子の違いが分かるんだろう。 「長くいるって、案外誤魔化しきかないのね」 「私を相手に誤魔化すな。何があった」 「……母親が俺の除隊嘆願出した。明日、話し合ってくる」 「な!」  落ち着けていた腰を上げたフェオドールは驚いたり青くなったりしている。けれど次には強情な顔をしてみせた。 「私も明日一緒に行く」 「いいよ、拗れるし」 「良くない! 私にも関係のある話しじゃないか」     
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

354人が本棚に入れています
本棚に追加