354人が本棚に入れています
本棚に追加
「関係はあるけれど、俺の家のゴタゴタだよ。それに俺は自分の考えを譲るつもりない。もし強制的に除隊させようってなら、一緒にクシュナート行くよ」
本当にそのつもりだった。
けれどフェオドールの方が意地になっているみたいで、睨み付けるようにボリスを見るのだ。
「勝手をするな。ボリス、逃げるな」
「逃げてないよ」
「ちゃんと話し合う気はあるのか」
「あるよ」
視線を合わせられないのは多少後ろめたいから。話し合う気はあまりない。きっと平行線を辿るし、一般的な常識を持つ善良な母にはきっと理解できないと思うから。
けれどフェオドールの方は側に来て、ギュッと手を握るのだ。
「私からも話をしたい。ここまで追いかけてきたんだ、ちゃんと向き合っていきたい。自分の事も、ボリスの事も」
「なにそれ、ちょっとカッコいい事言って」
「お前、相変わらず失礼だな。私だって一人になって考えたんだ。自分が何をしたいのか、どう進みたいのか。お前の隣りにいて恥のない人間になりたいと思っているんだぞ」
嫌な顔をするフェオドールのほうが、今はとてもカッコいい。
ボリスは苦笑して、次に溜息をついた。
「二〇年以上の嘘の上塗り、今更どうしようかな」
「正直な事を話せばいい。私も側にいる」
「んっ、有り難う。最悪手と手を取り合って逃避行していい?」
「構わない」
「わーぉ、刺激的」
最初のコメントを投稿しよう!