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翌日、両親と兄が待っている家にフェオドールと一緒に行った。
家もそんなに大きくはない。多少しっかりとしているけれど、家に使用人が何人もいるとかそんなレベルじゃない。ランバートの家や、まして王族のフェオドールの家に比べれば庶民に毛の生えたレベルだ。
二人で顔を出すと、母は途端に戸惑った顔をした。父も同じだが、意外だったのは兄の反応だった。
「二人とも、そんな顔はフェオドールさんにも失礼だよ」
そう言った兄オルトンは、弱いながらも笑みを見せてボリスとフェオドールを迎えてくれた。
家に入って席についたボリスとフェオドールは、正面に両親を見据える。父は戸惑いながらもフェオドールにも気配りをしている様子だ。
だが母は硬い表情のままでボリスとフェオドールを見ている。
「ボリスちゃん、お家に戻ってこない? お兄ちゃんの手伝いをして欲しいのよ」
開口一番、母は挨拶もそこそこにこう切り出した。余裕がないんだと思う。普段は気遣いもできる人だから。
ボリスはそれでも表情を崩さなかった。
「戻らない」
「どうして……」
「ここは、俺の居場所じゃない。俺はもう、自分の居場所を見つけたんだ」
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