家族だって譲れない(ボリス)

9/14
前へ
/119ページ
次へ
 今の仲間、今の場所、そしてフェオドールと一緒にいる事を望んだ。それを守る為に、今ここにいるんだ。  母の視線がフェオドールへと向けられる。その目はどこか非難めいていて、向けられるフェオドールも思わず俯いてしまう。 「そこの彼がいるから?」 「違う、もっと根本的に俺はこの家の家族じゃないんだ」 「どういう意味?」  母が戸惑った顔をする。当然だろう、この人が生んでくれたのだから。  でもボリスはずっと思っていた。思っても口にできなかった。これを口にしたら、家族とは決定的に離れてしまう気がしたから。  けれど今は違う。もう、嘘をつかなくていい。そういう場所を見つけたんだ。 「母さんは知らないでしょ、俺が誰かの血を見ることが好きな事。泣き顔が好きな事。奪い取るように征服する事に快楽を感じたり、自分好みに調教する事が好きな事」  言えば、両親はとても驚いた顔をして戸惑いの声を上げた。  けれどオルトンはどこか分かっていたような様子で、僅かに俯くだけだった。 「苛められてる兄貴を助けるフリをして、喧嘩を楽しんでた。血を見ると興奮した。これは兄貴を助けているんだと自分に言い聞かせて、本当は自分の欲望を満たしていたんだ」 「どうして……」 「そんなの自分でも分からないよ」     
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

354人が本棚に入れています
本棚に追加