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分からないけれど、気付いたらそうだった。それを「異常だ」と思うからこそ、隠す事で馴染もうとした。違和感を感じながらも、馴染む事には成功していたんだ。
「思春期になって、母さんも父さんも俺の行動に疑問を持たなくなったのをいいことに俺は、そういう趣味の人と付き合うようになってた。自分がサディストだって分かって、付き合い方を学んで……でも、結局は全部嘘。俺は、この家族の中で異分子だ」
「そんなこと」
「じゃあ、受け入れる? 自分の息子が誰かを支配したり、苦痛を伴うようなセックスに興奮を覚える、しかも男女の区別もないような人間だって」
母の困惑は限界かもしれない。青い顔のまま震えている。
「そんなの嘘よ。だって、ボリスちゃんはずっといい子で……」
「いい子のフリをして、その裏で動いてた。母さん、疑わないからさ。そんなのも全部利用していたんだ」
母の目から涙がこぼれて、父の腕に縋って顔を隠す。そんな母を抱きとめたまま、父は困りながらもボリスを見ていた。
「ボリス、その位でやめてやってくれ」
「父さん」
「……すまなかった、お前にもずっとそんな思いをさせていたんだな」
父は申し訳なく頭を下げる。父のこんな顔を見たいわけじゃなかった。
「親として、失格だな。息子の戸惑いをずっと分からないままだったなんて」
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