家族だって譲れない(ボリス)

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「仕方がないよ、俺も隠してたし仕事も忙しいの分かってた。別に不満はなかったんだよ。俺にはできすぎな家族だと思ってるし、今も好きだよ。でも……ここは俺のいる場所とは少しズレてるんだ」  ボリスは申し訳なく両親を見ている。そしてその側で俯いているオルトンへと視線を移した。 「兄貴はどっか気付いてたでしょ?」  指摘すると、オルトンはビクッと肩を震わせ、少しして頷いた。 「ずっと、助けて貰っていて側で見ていたから。苛められる俺を助けるお前の顔が、とても楽しそうなのが怖いと思う瞬間もあった」 「ははっ、だよね」  それはボリスも思っていた。助けたはずの兄の表情が凍り付いているのを見た事がある。あの瞬間が、たまらなく苦しかった。自分の異常さを悟られたようで、落ち着かなかった。  それでもオルトンは弱く笑う。分かっていたけれど受け入れた。そんな感じがした。 「それでもボリスが家族を大事に思っていたのを知っている。何だかんだと俺の事を助けてくれたのも、嬉しかった。それに、誰彼かまわず傷つける事はなかったし、自分から喧嘩をふっかけるような事はしなかった。だから、信じられた」 「ごめん、今になって裏切って」 「裏切りなんて思ってない。むしろ、悪かった。ずっと辛い思いをさせていたんだと知ったから」     
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