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オルトンの視線は自然と、隣りにいるフェオドールへと流れていく。そして穏やかに微笑み、一つ丁寧に頭を下げた。
「母が失礼をしました。どうか、ボリスの事をよろしくお願いします」
「え? あぁ、はい」
突然話を振られて戸惑いながらも、フェオドールは頭を下げる。そういう素直な対応に、父もどこか落ち着いて頭を下げた。
「ボリス、今の場所はお前らしくあれるんだな?」
「うん。仲間もこのままの俺を受け入れてくれてるし、フェオドールもこんな俺でいいみたい」
つまりかなりのマゾって事になるけれど。
だが父は深く頷いて、ボリスとフェオドールを交互に見た。
「お前が選ぶ道を進みなさい。家の事は大丈夫だし、今回の事は私から取り下げておく。お前の幸せを一番に」
「父さん……有り難う。ごめん」
「いいさ。そのかわり、後悔しないようにするんだぞ」
「うん」
母の頭を撫でながら、父は穏やかに伝えてくれる。こんな突然の事だったのに、許してくれる寛大さが身に染みた。
ボリスはそのまま視線をオルトンへと向ける。そして、何とも言いづらそうに問いかけた。
「兄貴はまだ、あ……あのゴリラみたいな彼女と付き合ってるの?」
何とも形容しがたいが、これが一番伝わる。実際オルトンはすぐに分かって苦笑し、首を横に振った。
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