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たまには優しいのもいいでしょ?(フェオドール)
ボリスの実家を後にして、昼食を早めに食べて家まで引き上げてきた。その間、ボリスは珍しく言葉が少なかった。
落ち込んでいるのだろうか。思って見ているけれど、いまいち分からない。激しく落ち込んでいる様子はなくて、ただ静かだったから。
家について、お茶を淹れて。夕方には帰るのかと思ったら「明日は有給使った」と言われて泊まるつもりらしい。
お泊まりとなれば少し期待もするけれど、この状態のボリスに求めるのは流石にできないとも思う。ボリスは言葉も少ないし、穏やかだけれど何を考えているのか分からないから。
「フェオドール」
「なに?」
「今日は、有り難うね」
珍しく穏やかな様子で微笑まれ、しかもお礼なんて。驚いて思わず額に手を当てた。熱でもあるんじゃないかと本気で疑ったらムスッとされて「失礼だな」と返された。
「もぉ、本当に感謝してるんだから」
「あぁ、うん。でも私は何もできなかった」
結局はただ側にいただけ。そんな感じがして申し訳ない。あれならボリス一人でも十分だったのに。
けれどボリスは首を横に振って、緩く笑った。
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