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「わりと心強かったよ。君がいたから、自分の意志を貫けた気がする。家族仲が悪い訳じゃないから、あの母を見たら自分の主張を引っ込めてた可能性はあるよ」
「……ボリス、本当に後悔とかしてないのか? 私と、その……」
言いながら、先の言葉が出てこなかった。もしもあの時、国で出会っていなかったら、ボリスは家族と今まで通りの関係でいられたんじゃないか。そんな事を思ってしまうからこそ、後悔していると言われるのが怖くて言葉を繋げられない。
そっとボリスの手が伸びてきて、頬に触れる。そしてとてもゆっくりと唇が重なった。
「してると思うわけ?」
「思いたくない、けれど」
「じゃあ、バカな事聞くのやめたら? 言っとくけど、後悔するくらいなら手を出してないから」
「でも、半分以上私が押しかけたんだし」
兄も周囲も押し切ってここまで来たのはフェオドールの意志。ボリスにも、それを押しつけた。危険でも無理矢理ここまできたのだし。
ボリスは笑って髪をグリグリっと掻き回す。そして次にはやんわりと抱き寄せた。
「押しかけてきちゃったんだもん、受け止めないとね」
「ごめん……」
「謝らないの。それに、本当に後悔してない。遅かれ早かれ、こういう事になったと思うしね。必要以上に責任なんて感じなくていいんだ。もしもフェオドールが責任感じてるなら、そのぶん俺を幸せにしてね」
「うん、絶対」
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