望んだものはただ、ひとつ ~迫りくるサーヴェ~

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「わかりました。確か、三日程のご滞在でしたよね。公子と公女のお二人がご使者として来られると言っておられたように記憶しております」  元執務官であるシェリダンの頭脳は未だ健在のようだ。満足そうにアルフレッドはシェリダンの髪を撫でる。 「ああ。確か公子はシェリダンと同い年だったか。公女はその二つ下と聞く」  ふむ、と脳内を整理しながら頷けば、アルフレッドはシェリダンの痩身を抱き上げ、湯から上がった。待ち構えていた女官たちが大判のタオルを広げて水滴を拭き取ってくれる。二人の会話を邪魔しないよう静かに、女官たちはシェリダンの身体に鈴蘭の香油を塗り込んでいった。 「では、それなりの恰好をしないといけませんよね。朝食後はそのまま広間に行かれるということでしょうか? でしたら、朝食までに支度を調えるべきでしょうか」  毎日のことであるのに、未だ女官たちに世話をされるのは恥ずかしいのか、シェリダンは頬を紅く染めながらもアルフレッドに聞いておかなければならないことを尋ねる。 「そうだな。もう着ておいた方が楽だろう」  柔らかなバスローブを羽織り、シェリダンを抱き上げたアルフレッドは彼を私室の鏡台まで連れていき、椅子に腰かけさせる。額に唇を一つ落として、アルフレッドも身支度のために一度退室していった。同時にシェリダンの周りにエレーヌと数名の女官が集まる。
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