あいつは、限りなく黒に近かった。

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 同じクラスの黒野の姿を見かけたのは、午後の十一時を過ぎた頃だった。  フードにウサギ耳のついた、限りなく黒に近い濃紺のパーカー。  ろくに話したこともなかったが、彼女にまつわる噂を耳にすることは多かった。  中二病を患っているとか、実はサイコパスなんじゃないかとか、まあ散々な言われようなのだが、それも彼女のミステリアスな雰囲気が妙な現実味を持たせているような気がした。  彼女は繁華街を避けるように、路地へと体を滑り込ませた。  何か変な好奇心に駆られて、俺は彼女の後を追った。  路地裏。  よく漫画でありがちな、ごみ箱が置いてあったりとか猫がそれを漁っているとか、そういった光景は一切見られなかった。  そこには、なにも無かった。  ただひたすらに、細い道のような隙間が存在するだけだ。  そう、彼女の姿さえも。  スマホの時計は、ちょうど零時を表示していた。  うさ耳パーカーのあいつは、闇に溶けてしまったのだ。
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