生か、死か

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 何日振りかで食べ物を口にすることが出来る。食べられる時に食べておかなければ。ヤサに帰ればどうしたって誰かに見つかり独り占めすることは出来ない。今ここで全部食べてしまうのが賢明だろう。  俺はさっそく包みを開けたチョコレートを口に入れた。  ああ……。甘美な味わいが五臓六腑に痺れる。それからは無我夢中だった。包装紙を破きひたすら貪った。形、風味などを堪能している暇などなかった。とにかく空っぽだった腹が一度味わってしまった痺れを要求してやまなかった。  一体いくつ食べたのだろう。気が付くと包装紙を開いていない箱がなくなっていた。未練がましくガサガサと袋をかき回してみるがやはりもう俺は全部食べてしまったようだ。  まぁいい。それなりに腹は満たされた。  俺はそのまま公園の地面に大の字になった。月がキレイだ、なんて思えるこの余裕はいつぶりのことか。世の中には俺みたいなのもいれば、こんなにチョコレートを貰い、それを惜しげもなくコンビニのゴミ箱に突っ込む野郎もいるのだな。
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