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ジャーミアが一番助けを求めている時に、ただ突っ立っていることしか出来なかった。
あのたった少しの時間が、シオンの中で強い悔恨となってしまっていた。
今、顔を顔を向き合わせてもどんな声をかければいいのかわからない。それどころか彼女を傷つけるようなおかしなことを言うかもしれない。
自分の欠点は自分が一番よくわかっている。その欠点を引きずり、今までずっと人と関わることを避けて生きてきた。
そんな男が彼女の心に寄り添えるのか、自信が無い。
「俺が…あの人を幸せにできるわけ、無いだろ…」
閉じていた目をゆっくりと開いて呟いた。
怖くて怖くて、好きな女に寄り添うことすら出来やしない。プリムラの言う通り、自分は己の事しか考えていないのだ。
「シオン殿」
「っ!」
「大丈夫ですか、座り込んで…御加減でも?」
その声に弾かれたように顔を上げた。
立ち上がって振り返れば、こちらに歩み寄る少年が一人。
「ムスタファ様…申し訳ありません、何でもないのです」
「そうですか、見つかってよかった。探しておりましたので」
「…俺を、ですか」
昨日のことだろうか。報告書の為に必要ということで、証人として警備兵達から簡単な尋問は受けたはずだが。
その心情を察したのかムスタファは首を振り言葉を付け足した。
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