第三章:踏み出す愛

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「目真っ赤に腫らして何言ってんだ。鏡見てねえだろ、不細工になってるぞ」 「まあひどいわ」 ジャーミアは起き上がるとハイドの体を軽く拳で叩いた。ハイドはその拳を腕で防ぐ。 少しばかりじゃれ合うようなやり取りが続いた後、突然ハイドがジャーミアの手を掴んで問うた。 「…何があった?」 それまで笑っていたジャーミアが、口元だけに笑みを残して固まった。 「ハイド…」 やがて、彼女は震えた声で吐き出した。 「…どうしてなのかしら?全部受け入れるって、決めたはずなのに」 ぱた、ぱた、とジャーミアの手に雫が落ちた。 溢れ出すそれを拭うこともせず、ジャーミアは引き攣った笑顔で涙を流し続けた。 「駄目ね、私…」 傷も罪もいつかきっと全て受け入れられる。その希望を支えに自分と戦ってきた。 けれど、イルハムを会った時に悟ってしまった。 ――お前も同じなんだな。 その通りだった。どこまで行っても染みついた罪の汚れが落ちることはない。 そんな現実を目の前にすると、今までの過去が重くのしかかって身動きすら出来なかった。 ジャーミアは両手で顔を覆って泣いた。 「…シオンが好きか?」 「嫌、聞かないで」 お願い聞かないで。ジャーミアはそう繰り返した。 「私を見てよ。ハイド」     
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