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ジャーミアは顔を上げると寝台に手をつき、ぐっとハイドに身を寄せた。自虐的な作り笑いを張り付ける彼女の姿は痛々しくて、全身がつぎはぎになった人形のようだ。
「どう見える?」
「……」
「あの人は綺麗だと言うわ。こんな女をよ、笑ってしまうでしょ」
ああ、あの人の言う様に綺麗な女だったら。何も知らない頃の私で出会えていたら、どれほど良かっただろう。
今の私はどろどろのぐちゃぐちゃ。
「何も知らないからそんなこと言えるんだわ」
「ジャーミア」
愛してるなんて言わないで。貴方を愛してしまう。
貴方のその無垢な瞳まで穢してしまうから。
「私は奴隷で、人殺しなのに…!女としても終わっているのに…!」
徐々にジャーミアの口調が荒くなり、体が震え出す。
「貴方だって知ってるでしょ!私の体はもう…っ!!」
「ジャーミアっ!」
ジャーミアがその言葉を口にする前にハイドは彼女を力強く抱きしめた。
「やめろ」
「っ…」
耳元で聞こえる低い声と温かい体温に、錯乱しかけていた心が落ち着きを取り戻す。
乱れたジャーミアの呼吸を聞きながらハイドは顔を伏せて呟いた。
「…今のお前は、少し前の俺にそっくりだ」
だから気持ちが痛いくらいにわかる。
「愛されるのが怖いんだ」
その言葉にジャーミアは息を飲んだ。
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