第三章:踏み出す愛

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「見つめられると自分の中の暗い影が浮き上がって心を開けない。怖くて仕方ないから突き放すことしか出来ない。どうして向き合えないんだろう。そうやって自分を責める」 じわり、と涙が滲む。乾いた唇が震えて視界が霞んでいく。 「お願いだから嫌ってくれ、そう願いながらも心のどこかでは思ってる筈だ」 ――愛してほしいって。 ぼろっと堰を切ったように溢れた涙はとめどなく頬を濡らしていった。 「大丈夫だ。ジャーミア」 柔らかい栗色の髪を撫でながらハイドは言った。 「俺も最近まで知らなかったが、世の中にはどんな事があっても真っ直ぐ愛情を叫んでくる馬鹿な男ってのがいるんだ。シオンは間違いなくその馬鹿な男の一人だぞ」 「どうして、言い切れるの…そんなのわからないじゃない…」 「お前、何も知らないって言ったな。それはお前らお互いにだ」 シオンがジャーミアの過去を知らないように、ジャーミアもシオンの過去を知らない。 細い肩を掴みハイドはジャーミアの顔を真っ直ぐ見つめた。 「あいつは自分から人に近づく奴じゃない。気持ちを伝えるのが下手くそで、相手に嫌な顔をされることが怖いから関わる事を自ら遮断するような臆病な奴だ」 しかしシオンはこの国に来てジャーミアと出会い、初めて彼女に歩み寄った。 「そんな自分を変えたいと思うほどお前のことを愛してるんだ」 「っ…でも…私は…」     
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